日本政策金融公庫の追加融資のタイミングは?2回目・3回目も申し込みできる

事業運営を続けていくうえで、さまざまな場面でまとまった資金が必要になるケースが考えられるでしょう。

新たに資金が必要になった場合、日本政策金融公庫の融資を返済中であっても追加融資を申し込むことはできるのでしょうか?

結論として、日本政策公庫では、返済中であっても追加融資を受けることは可能です。

しかし、追加融資タイミングや成功させるためのポイントを押さえておかないと追加で融資を受けるのは難しいといえるでしょう。

そこで、今回は、日本政策金融公庫の追加融資のタイミングや成功させるためのポイントについて分かりやすく解説します。

目次

日本政策金融公庫の追加融資

日本政策金融公庫から追加融資を受ける場合、初めて融資を受ける場合と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

追加融資を受ける際には、一度審査を通過しているからといっても初回の融資より審査が通りやすくなる訳ではありません。むしろ、初回融資以上に厳しく審査される可能性が高いといえます。

ここでは、日本政策金融公庫の追加融資について以下のとおり解説しますので、詳しく見ていきましょう。

初回融資との違い

追加融資の場合、初回融資とは審査の進め方やポイントが異なります。

初回審査の場合、事業計画の内容や実現可能性などが審査の中心です。

一方、追加融資の場合は、決算書や確定申告書などの実績に基づいて、融資した資金を元に事業が円滑に進んでいるのかが判断基準になります。

追加融資を申し込む場合、すでに融資先として取引があるため、初回融資と比べて必要書類は少なめです。また、日本政策金融公庫側が事業内容なども把握していることから、審査もスムーズに進みやすいといえるでしょう。

しかし、初回融資よりも追加融資の方が融資審査に通りやすい訳ではありません。

追加融資では、初回融資とは異なり、実績重視になります。売上や利益状況など、これまでの返済状況などの実績が重視される点を理解しておきましょう。

審査が厳しくなる

日本政策金融公庫の追加融資では、初回融資よりも審査が厳しくなる傾向にあります。

初回融資では、事業計画書の完成度などの実績ではなく、計画性が重視されます。一方で、追加融資の場合には、実績が重視されるため、審査が厳しくなる傾向が強いです。

では、具体的にはどのような点が厳しく見られるのでしょうか。

資金の使い道と実績が厳しく見られる

日本政策金融公庫から追加融資を受ける場合には、初回融資時の資金の使い道や実績を厳しく見られる可能性が高いです。

例えば、運転資金の場合、売上拡大に伴う増加運転資金なのか、赤字補填資金なのかといった具体的な資金の使い道が必要になります。

設備資金であっても、その設備導入によってどのような効果が見込まれるのか、簡易キャッシュフローから返済原資が確保できるのかなどが厳しく審査されます。

また、追加融資では、初回融資実行後の売上や利益などの実績が厳しく見られます。初回融資では、事業計画の将来性や事業者の人間性などが審査のポイントです。

しかし、追加融資の場合には、決算書や返済状況などの実績が重視されます。

このように、追加融資時には、資金の使い道と実績が厳しく見られる点は注意しておきましょう。

なお、追加融資時には、初回融資時の資金が適切に使用されたかを確認されるケースもあります。特に、設備資金の融資を受けた場合、その資金が運転資金に利用されていると資金使途違反となり、追加融資が利用できない可能性が考えられます。

場合によっては、資金使途違反と判断された融資残高について一括返済を迫られるケースもあるため、資金の使い道には十分な注意が必要です。

業績が悪化している場合は審査が厳しい

業績が悪化している場合には、日本政策公庫から追加融資を受けたくても受けられない可能性がある点は注意しておきましょう。

赤字の場合や売上や利益が減少傾向であるなど、業績が悪化している場合には、追加融資の審査も慎重に行われます。

業績が悪化しているからといって絶対に追加融資が利用できない訳ではありません。しかし、今後の見通しなどを具体的に説明できるようにしておくことが求められるでしょう。

例えば、コスト削減などの具体的な改善策を講じている場合や、事業再建に向けた前向きな追加融資の場合には、審査を通過できる可能性もあります。

いずれにしても、業績が悪化している場合には、審査も厳しい目線になる点は理解したうえで、追加融資を申し込むようにしましょう。

面談は不要になることも

日本政策金融公庫の追加融資では、面談が不要になるケースがあります。

通常、初回融資時には日本政策金融公庫担当者との面談が必要です。しかし、追加融資の場合は、書類審査と電話による確認で完結する場合があげられます。

例えば、事業が順調に推移し、過去の返済実績にも問題がなければ、面談不要と判断され、スムーズに手続きが進められる可能性が高いでしょう。

ただし、電話によるやり取りにおいて、決算状況や資金の必要性、今後の事業見通しなどの確認は行われます。しっかりと内容を説明できるように準備しておくことが求められるでしょう。

また、面談するかどうかは日本政策金融公庫が判断します。追加融資であっても面談が必要なケースもある点は理解しておきましょう。

追加融資を受けるタイミング

日本政策金融公庫の追加融資について、初回融資との違いを解説しました。

新たに追加融資を受けたい場合、業績が悪いと追加融資を受けるのはなかなか厳しいでしょう。しかし、ポジティブな理由であれば、追加融資を利用しやすいのが実状といえます。

では、実際に日本政策金融公庫からの追加融資を受けたい場合、どのようなタイミングで受けると良いのでしょうか。具体的な例をご紹介します。

事業拡大・設備投資を検討している

事業拡大・設備投資を検討しているタイミングで、日本政策金融公庫の追加融資を利用するのがおすすめです。

事業を開始以降、その事業が軌道に乗り、計画を上回るような実績が出ている場合、新たに店舗を増やしたり、機械設備の増設といった前向きな投資を検討するケースが考えられます。

こうした前向きな資金は審査にも通りやすく、日本政策金融公庫から追加融資を受ける良いタイミングだといえるでしょう。

また、金融機関の担当者の立場からすると、融資先の業績が好調な場合には融資審査も通しやすいため、事業拡大に向けた設備投資には前のめりになるケースが多いです。

とはいえ、設備投資を行う際には、適切な資金計画が重要になります。過度な投資は、金融機関の審査が通ったとしても返済負担が大きく、万が一事業拡大がうまく行かなかった場合のリスクが大きいので注意しておきましょう。

金利が上がる前に多く借りておきたい

金利が上がる前に借りておくことも追加融資を受けるタイミングとしておすすめです。

2025年12月19日には、日銀の政策決定会合によって、政策金利が0.25%引き上げられ、0.75%となることが発表されました。

日銀の政策金利引き上げに伴い、日本政策金融公庫においても貸出金利の引き上げが見込まれます。

とはいえ、政策金利の引き上げが決定しても、すぐに貸出金利が引き上げられるわけではありません。預金金利が上がってから、貸出金利の引き上げとなるため、今回の金利引き上げにおいても、貸出金利が引き上げられるには一定の期間がかかると考えられます。

特に、日本政策金融公庫の融資制度は固定金利の融資制度も多いです。金利が引きあがる前に借りておくと、低い金利の状態で資金調達が可能となります。

したがって、金利が引き上げられる前は、追加融資のタイミングとしておすすめできるでしょう。

追加融資を成功させるためにできること

日本政策金融公庫からの追加融資を成功させるためには、どのような点に注意しておくと良いでしょうか。

追加融資を成功させるためのポイントについて、見ていきます。

事業の実績と数字を整理しておく

事業の実績と数字を整理しておくことも日本政策金融公庫の追加融資を成功させるためのポイントとなります。

自身の経営する企業の売上高や利益状況、簡易キャッシュフローなどを整理・把握しておくことは、追加融資を成功させるためだけでなく、今後の事業を運営していくうえでも非常に大切です。

事業の実績や自社の数字を整理していくと、自社のどのような部分に課題があるかも見えてきます。その課題をどう解決させていくかの対策まで考えておくと、追加融資の審査で質問された際にもスムーズに回答できるため、融資が利用できる可能性も高まります。

このような点からも、事業の実績と数字を把握しておくことは、日本政策金融公庫の追加融資を成功させるうえで重要なポイントといえるでしょう。

業績が悪化する前に相談する

追加融資を成功させるには、業績が悪化する前に相談しておくことが重要です。

融資が実行されるまでには、一定の時間がかかります。決算書や確定申告書などの財務内容や事業実績に問題がなければ、審査もスムーズに進むでしょう。

しかし、業績が悪化している場合には、審査に時間がかかるだけでなく、返済能力がないと判断され、融資が利用できない可能性も高いです。

また、資金繰りが苦しい状況で申し込んでも、審査に時間がかかってしまえば、資金繰りに間に合わないケースも考えられるでしょう。

追加融資では、売上や利益状況、簡易キャッシュフローなどの実績ベースに基づいて評価が行われます。事業が安定しているタイミングで相談しておく方が資金を確保しやすくなるため、早い段階で相談しておく方が良いといえるでしょう。

追加融資を相談するタイミングは、経営者の資金管理や計画性が問われる部分といえます。資金繰りが悪化する前に、今後の展開を見据えておくことが大切です。

税金の未納・滞納を解消しておく

税金の未納・滞納を解消しておくことも日本政策金融公庫の追加融資を成功させるうえで重要なポイントの1つといえます。

日本政策金融公庫に限らず、銀行や信用金庫などの金融機関においても、税金の未納や滞納は審査に悪影響を及ぼす項目です。

金融機関からすると、税金の未納や滞納があれば、融資金の返済も行われない可能性が高いと判断せざるを得ないでしょう。また、税金滞納によって預金の差し押さえが行われた場合、債権回収に影響が出てしまいます。

ほかにも、社会保険料の滞納、取引先への支払遅延、信用情報に問題がある場合も、追加融資が利用できない要因として考えられるでしょう。

このように税金の未納・滞納があると追加融資は難しくなります。税金の未納・滞納がある場合には解消しておくことが重要です。

必要に応じて資金調達サポートを活用する

日本政策公庫の追加融資を成功させるには、必要に応じて専門家に相談するなどの資金調達サポートを活用することも重要なポイントの1つです。

資金調達サポートを活用すると、審査対策や面談への同席、財務分析や資金管理、継続的な経営支援など専門家によるアドバイスが受けられます。

また、どのような点を改善すべきかといったアドバイスだけでなく、融資書類の作成サポートが受けられるため、追加融資の審査も通りやすくなる可能性が考えられるでしょう。

経営者にとって専門家からのアドバイスは、耳が痛くなる反面、現状を打破するきっかけにもなります。

より良い経営体制を構築するうえでも、必要に応じて資金調達サポートの活用を検討してみると良いでしょう。

日本政策金融公庫以外の追加融資も検討すべき

銀行融資や信用金庫、民間のビジネスローンなど、日本政策金融公庫以外での資金調達方法を検討しておくことも大切です。

日本政策金融公庫に限らず、銀行や信用金庫などの金融機関は、融資先の事業実績や返済状況などを見たいという考えが強いです。

したがって、融資を実行してからすぐに追加融資の相談をしても消極的になってしまうケースが考えられるでしょう。

また、事業者が適切に事業運営を継続していくには、複数の金融機関と取引を行うことも大切です。1つの金融機関のみで資金調達を行っていると、突発的な資金需要が発生した際に対応できないケースが考えられます。

金融機関では、リスク管理のため、1つ1つの融資先に対する上限額を定めています。例え、業績の良い企業であっても、融資上限額を上回る場合には、審査に通りにくくなる可能性が考えられるのです。

しかし、複数の金融機関と取引しておくと、状況に応じて資金調達が可能になります。

こうした点からも、銀行や信用金庫、民間のビジネスローンなど、日本政策金融公庫以外での借入先も検討しておきましょう。

追加融資に関するよくある質問

追加融資時に必要な書類は何ですか?

追加融資時には、一般的に以下の書類が必要です。

  • 借入申込書 ※公庫ホームページより取得可能
  • 決算書(直近2期分)※個人事業主の場合は確定申告書
  • 試算表 ※決算から6ヶ月以上経過している場合
  • 見積書 ※設備資金の場合
  • 預金通帳 ※直近6ヶ月分以上
  • 納税証明書

追加融資の方が、初回融資と比べると必要書類は少なめです。

初回融資の場合には、事業計画書など事業内容を詳しく説明できる資料が必要ですが、追加融資の場合には、すでに取引実績があるため必要書類が少なくて済みます。

なお、日本政策金融公庫では、さまざまな融資制度が利用可能です。

どのような融資制度が利用できるかは、公庫へ相談すると、事業内容や相談内容に応じた適切な制度を案内してもらえます。事前に相談しておくと書類の不備も少なくなり、スムーズに申し込めるので、あらかじめ公庫に相談しておくと良いでしょう。

最短でどのくらいで融資を受けられる?

日本政策金融公庫から追加融資を受ける場合、最短だと申し込みから1~2週間で実行できるケースが考えられます。

ただし、書類に不備がないことが重要です。書類に不備があると審査を進めることができずに時間がかかってしまう可能性が考えられます。

また、資金需要が集中しやすい繁忙期も審査に時間がかかるため、注意が必要です。

繁忙期には数多くの審査が行われるため、例え書類に不備がなかったとしても融資が実行されるまでに1ヶ月以上かかるケースも少なくありません。

したがって、スケジュールに余裕を持って2~3か月前から準備をしておくと良いでしょう。

なお、追加融資は創業融資に比べて、審査が短縮される傾向にありますが、過去の返済状況や事業の実績などが重視されます。

返済の遅れや事業実績が芳しくない場合には追加融資が受けられない可能性もあるため、注意しておきましょう。

この記事を書いた人

資金調達を専門とする行政書士事務所サブシディの代表。立教大学法学部卒。日本政策金融公庫や補助金を活用した資金繰り改善が得意。法律と金融に関する情報を発信しております。

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