新たに事業を始める場合、民間金融機関では融資を受けられないケースも多いでしょう。
日本政策金融公庫では、新規創業やスタートアップを支援する融資制度が利用可能です。
これまで、日本政策金融公庫のスタートアップ支援の融資制度は融資限度額3,000万円となっていましたが、2024年4月より7,200万円まで増額されています。自己資金要件も撤廃され、より利用しやすくなっているのが現状です。
そこで、今回は、日本政策金融公庫のスタートアップ支援について分かりやすく解説します。
日本政策金融公庫のスタートアップ支援融資制度
通常の企業融資では、過去の実績や客観的なデータを基に融資審査が行われます。
したがって、事業実績にも乏しいスタートアップ企業は、民間金融機関から融資を受けるのは難しいのが現状です。
しかし、スタートアップ企業は、革新的なアイデアや技術を用いて新たなビジネスモデルを創出し、社会課題の解決など大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
スタートアップ企業へのサポートは、国や地域経済の発展・活性化にもつながり、地域の雇用促進などの効果も期待でき、国全体で支援していく必要があるといえるでしょう。
こうした背景と目的から、日本政策金融公庫では、スタートアップ企業を支援する融資制度が設けられています。
ここでは、日本政策金融公庫のスタートアップ支援について解説しますので、それぞれ見ていきましょう。
スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金の概要は以下のとおりです。
| 項目 | 国民生活事業 | 中小企業事業 | |
|---|---|---|---|
| 利用対象者 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 | 次のすべてに当てはまる方事業計画書を策定し、事業の成長を図ること次のいずれかに該当すること次のいずれかから出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権及び新株予約権付社債等の取得を含む。)を受けている方(見込まれる方を含む。)およびその100%出資子会社一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く。)等独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合等株式会社産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合等J‐StartupプログラムまたはJ‐Startup地域版プログラムに選定された方およびその100%出資子会社 | |
| 資金使途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 | 設備資金及び長期運転資金※ 長期運転資金は、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金等を含む。 | |
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | 20億円 | |
| 融資期間 | 運転資金 | 10年以内(うち据置期間5年以内) | 20年以内(うち据置期間10年以内) |
| 設備資金 | 20年以内(うち据置期間5年以内) | ||
| 金利 | 特別利率A・B・Cが適用 | 特別利率、基準利率が適用(上限2.5%) | |
| 担保・保証人等 | 顧客希望確認のうえ相談 | 担保有無・種類は応相談保証人不要 | |
日本政策金融公庫では、国民生活事業及び中小企業事業の両方でスタートアップ向けの融資制度が利用できます。
国民生活事業では、これまで3,000万円の融資限度額でしたが、7,200万円まで借入可能となり、運転資金の返済期間も延長されています。
担保や保証人の条件も柔軟になっており、実態に合わせた資金調達が可能です。
また、中小企業事業のスタートアップ支援資金は、融資限度額も20億円と高額で、返済期間も運転資金、設備資金ともに最大20年と長期での設定が可能です。
返済据置も最大10年まで設定できるため、事業が軌道に乗るまで返済負担を抑えられる点は大きなメリットといえるでしょう。
新株予約権付融資
中小企業事業のスタートアップ支援では、「新株予約権付融資」にも対応しています。
新株予約権付融資とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、将来決められた価格で株式を取得できる権利(新株予約権)を無償で提供する資金調達方法です。
日本政策金融公庫の新株予約権付き融資の概要は以下のとおりです。
| 融資限度額 | 20億円 |
|---|---|
| 新株予約権の行使価額 | 神格予約権取得時の株式の時価 |
| 新株予約権の発行価額 | 無償 |
| 金利 | 基準利率(上限2.5%) |
| 予約権割合 | 原則100% |
| 行使期間 | 新株予約権発行日から償還期限まで |
| その他 | 社債及び新株予約権の発行には、取締役会や株主総会の開催等の所定の社内手続きが必要 |
日本政策金融公庫では、2007年から新株予約権付融資の提供を開始以降、政府のスタートアップ支援強化に伴って段階的に拡充。2024年2月からは最大20億円にまで拡充されています。
無担保で利用できるため、固定資産や知的財産などの資産のないスタートアップ企業でも利用しやすい融資制度といえるでしょう。
日本公庫スタートアップ支援ポータル

日本政策金融公庫では、スタートアップ支援を目的として、2024年6月よりスタートアップ専用のポータルサイトの運営を開始しています。
ポータルサイト内では、実際に日本政策金融公庫から融資を受けた企業のインタビュー記事の掲載をはじめ、スタートアップ支援機関の紹介など、役立つ情報が数多く掲載されています。
インタビュー記事は、アグリテック、ICT、AIなどの事業領域ごと、地域、フリーワードで検索可能です。同業者の情報なども参考にできるため、どのような事業家が利用しているのかを見ておくと良いでしょう。
実際に日本政策金融公庫がスタートアップ支援融資を行った企業も紹介されています。参考にしてみると良いでしょう。
スタートアップ企業が日本政策金融公庫の融資を受ける前の準備
スタートアップ企業が日本政策金融公庫の融資を受ける際には、どのような準備をしておくと良いでしょうか。
ここでは、スタートアップ企業が日本政策金融公庫の融資を受ける前にしておくべき準備としてポイントを4つ解説します。
事業計画書を作りこむ
スタートアップ企業が日本政策金融公庫の融資を受ける際には、まず、事業計画書をしっかりと作り込むことが求められます。
スタートアップ企業は、実績が少ない、もしくは起業前で実績がないケースが多いでしょう。こうした場合、融資審査を行う日本政策金融公庫の担当者は、事業計画書や面談から融資の可否を判断するしかありません。
例え、革新的なアイデアが出てきたとしても、ビジネスとして成功させるには、綿密な事業計画の立案が不可欠といえます。
ビジネスモデルを構築し、具体的な事業計画に織り込んでいくには、綿密な市場調査や分析、試作を踏まえた市場検証などが重要です。
また、専門家のサポートを受けると客観的な視点も得られるため、より精度の高い計画書作成が可能になります。必要に応じて専門家のサポートを検討すると良いでしょう。
自己資金をできるだけ増やす
自己資金をできるだけ増やしておくことも、日本政策金融公庫のスタートアップ支援融資を受ける際には大切なポイントの1つです。
2024年4月のスタートアップ支援融資精度内容の変更によって、自己資金要件は撤廃されましたが、依然として自己資金の有無は融資審査に大きく影響する要素です。
自己資金が多いとそれだけ借入額を抑えられ、返済負担も少なくなるため、融資審査も通りやすくなります。
目安としては、借入希望額の20〜30%程度は用意しておくと良いでしょう。
また、自己資金を増やすには、日々の無駄な支出の見直しが大切です。節約意識を持つことは、経営者としての資質を見極めるうえでポイントともいえます。
日々の無駄な支出、削減を行い、自己資金を増やす努力をしていきましょう。
公庫以外のスタートアップ向けの融資・支援制度を幅広く調べる
公庫以外のスタートアップ向けの融資や支援制度を幅広く調べておくのも必要な準備といえます。
新規創業は、地域経済の発展や活性化、地域の雇用を促すうえでも重要なことから、自治体や地方金融機関でも独自の支援制度を設けているケースも考えられるでしょう。
例えば、各都道府県の信用保証協会では、「スタートアップ創出促進保証」として、経営者保証を不要とした保証制度を提供しています。
ほかにも、民間金融機関で独自のスタートアップローンなどを提供するケースも増えつつあります。
また、よろず支援拠点では、事業運営に関するさまざまな悩みを相談で相談可能です。補助金の案内、補助金申請の支援を受けることもできるため、まずは一度相談してみるのもおすすめできるでしょう。
このように、公庫以外のスタートアップ向けの融資や支援制度を調べておくことは大切なポイントといえます。
先輩経営者に相談する
先輩経営者に相談するのも融資を受ける前にやっておきたい準備の1つです。
事業を行っていると人脈も広がり、さまざまな経営者と知り合う機会も多くなるでしょう。
先輩経営者の中には、親身になってアドバイスやサポートをしてくれる方もいらっしゃるかもしれません。関係性が近い人に相談してみると、取引のある金融機関を紹介してくれたり、役に立つ情報を教えてくれたりする可能性が高いでしょう。
特に、取引のある金融機関を紹介してもらった場合、金融機関側も無下に断るわけにはいきません。日本政策公庫との協調融資の提案や取引業者を紹介してくれるケースも考えられます。
