起業や開業時に使える補助金・助成金一覧

起業や開業時に使える補助金・助成金一覧

起業や開業をする際には、多くの資金が必要です。想定外の出費も多く、用意していた資金がすぐに無くなってしまいます。そこで活用したいのが補助金と助成金です。

補助金と助成金は、会社の実績がなければ受給できないイメージを持っている方も多くいます。しかし、種類によっては、起業や開業したての方であっても利用しやすいものがあります。

この記事で分かること
  • 自社に最適の補助金と助成金を探すのは大変
  • 前払いが原則のため必要資金を用意しておく
  • 補助金は申請期間が限定されており管理が大変

今回は、補助金と助成金について解説していきます。起業前にチェックしておきましょう。

目次

起業や開業時に使える補助金・助成金

創業に関する書類

補助金と助成金は種類が多いため、自社に適したものを探すだけでも大変です。起業や開業時に活用しやすい人気の補助金と助成金をご紹介します。

補助金

補助金とは、原則として返済不要の給付金です。目的や事業に合わせた様々な補助金が用意されています。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業再構築補助金
  • 事業承継・引継ぎ補助金

申請要件や難易度は、補助金によって大きく異なります。気になる補助金がある方は専門家へ、自社が要件を満たすかどうか確認してみましょう。

ものづくり補助金

正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、ものづくり補助金と呼ばれています。

中小企業等が革新的な設備投資やサービス開発を行う際、費用の一部を支援することを目的とした補助金制度。受給の申請するには、税抜きで単体価格50万円以上の設備投資を行う必要があります。

受給できる補助金の額は「従業員数と申請枠」で異なります。例えば、オーダーメイド設備を導入する場合は、100万円〜8,000万円です。

補助率は、原則として補助対象経費の1/2または2/3で設定されています。

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が実施する革新的なチャレンジを支援する制度です。起業・開業時にも利用を検討してみましょう。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の労働生産性の向上を目的に運用されています。

個人事業主も被補助者として補助金の申請ができることが特徴です。実際の運用においても、多くの個人事業主が採択されています。

IT導入補助金は「通常枠」「インボイス枠」など4つの申請枠に分かれています。導入するITツールによって申請枠が異なります。

補助率は1/2以内〜4/5以内、補助額は5万円以上〜450万円以下となっています。

例えば、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)枠は、従業員5人以下の個人事業主であれば小規模事業者における補助対象者として認められます。

事業の拡大や業務改善をしたい方に人気があります。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者向けの補助金です。持続的経営に向けた経営計画を策定し、その取組みに必要な費用の一部を受けられます。

小規模事業者持続化補助金を受給するには、事業者が策定した事業計画書について、地域の商工会議所や商工会の指導を受けるとともに、事業支援計画を策定してもらうことが条件となっています。

補助の対象は、従業員の数が5人ないしは20人以下の事業者のみです。これまでの採択率の平均が約62.0%です。この補助金一般型には5つの申請類型に分かれており、いずれか1つを 選んで申請します。

補助率は2/3で、補助上限額は枠によって異なり50万円〜200万円です。小規模事業者持続化補助金の採択率は、平均して30%〜40%程度で運用されています。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、2021年に創設されました。

申請の条件は、「資本金または出資総額が10億円未満で、資本金額や出資総額が未設定の場合は、従業員数が2,000人以下であること」です。

申請枠は6つで、補助率は1/2または2/3で設定されています。採択率はこれまで50%前後でしたが、直近の第11回公募では大幅に低減して20%。

事業再構築補助金は、経理実務などに弱い人には申請しにくい制度です。申請する際は事業コンサルタントや公認会計士などの指導を受けることをおすすめします。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業や小規模事業者の、事業承継やM&Aなどを支援するものです。

支援の対象によって「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3事業に分かれています。近年の公募では、専門家活用枠だけが実施されています。

被補助者に求められる条件は、「日本国内に拠点か居住地を置いて事業を営み、地域経済に貢献している中小企業者などであること」です。

事業承継・引継ぎ補助金の補助率は1/2または2/3で、補助金の上限額は600万円以内または800万円以内に設定されています。

事業承継・引継ぎ補助金の1次〜9次公募における平均の採択率は57.3%です。なお、事業承継対象期間は、補助事業完了期限日からさかのぼること5年に設定されています。

助成金

助成金は、主に厚生労働省が管轄する給付金。雇用や職場に関して改善を図る際に利用できます。

  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金
  • 雇用調整助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 両立支援等助成金

補助金と同様に原則として返済不要です。要件を満たすと100%受給できるのが特徴です。

キャリアアップ助成金

キャリアップ助成金は、非正規労働者を対象とした助成金です。

非正規雇用の従業員の「正社員化」や「処遇改善」の取り組みを実施することで、助成金が支給されます。
助成率は取り組み内容によって異なりますが、一般的には1/2または2/3です。

助成額もコースによって異なり、正社員化コースの場合は「1人当たり最大72万円」が支給されます。

現在「正社員化」や「賃金規定等改定」「障害者正社員化」など5つのコースで運用されており、助成金の申請は、厚生労働省の公式サイトからの電子申請が可能です。

キャリアアップ助成金の活用を申請する際には、労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、提出しなければなりません。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、従業員を対象とする教育訓練や研修などの実施を、積極的に支援するものです。

具体的には、企業が従業員に対して教育訓練やスキルアップ研修などを実施した場合、その「訓練や研修の経費」や「訓練や研修期間中の賃金の一部」が助成されます。

助成金は、従業員に対して訓練や研修を実施する「雇用保険適用事業所の事業主」への支給で、助成率は対象となる経費の1/2または2/3です。

人材開発支援助成金には、「人材育成支援」「教育訓練休暇等付与」「人への投資促進」「事業展開等リスキリング支援」などの7つのコースがあります。

採択率は公表されていませんが、要件を満たした適切な申請ができていれば助成金の受給が可能です。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、経済的な理由で事業縮小をした事業主が受給できる助成金です。

従業員の雇用維持を図るための休業・出向・教育訓練などに要した費用の一部が助成されます。
雇用調整助成金の助成率は。1/2または2/3です。

例えば「休業」の場合、助成額としては「1人1日当たり8,635円」を受給できます。
被助成者はすべての事業主で、「雇用保険の適用事業主であること」や「売上高や生産量が減少していること」などが受給の要件です。

助成金は、休業中や出向中の賃金を支払ってからの申請ですから、労働局・ハローワークによる審査を経て2カ月程度で受給できます。

雇用調整助成金を利用すれば、企業は経済的な困難に直面しても従業員の雇用を維持しやすくなります。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は、職場環境の改善や整備をすることで、人材の確保や定着を促進することを目的としています。

被助成者は事業主で、職場環境の改善や整備の際、実施に必要な費用の一部を受給できるのです。

人材確保等支援助成金には、魅力のある職場づくりや労働環境の向上などを図るために、「雇用管理制度助成」「人事評価改善等助成」など9つのコースが設けられています。

助成率は1/2または2/3で、助成金の額はコースによって異なる設定です。例えば、「中小企業団体助成コース」では、構成している中小企業者の数に応じて600万円から1,000万円までの範囲で助成されます。

助成金をうまく活用し、コストを抑えながら従業員が働きやすい環境を実現したいものです。

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、従業員の「仕事と家庭の両方」の生活を成り立たせるよう支援する助成金です。

育児や介護をしながらでも働き続けられる職場環境への整備を、両立支援等助成金で支援します。

すべての事業主を対象とする両立支援等助成金の申請枠は、「出生時両立支援」「育児休業等支援」「育休中等業務代替支援」など6コースでの設定です。

各コースとも、事業主が従業員の仕事と家庭を両立できるよう雇用環境を改善することで、持続可能な雇用を維持するための支援を目指しています。

助成率は1/2または2/3で、助成額はコースによって異なりますが、例えば育児休業等支援コースでは育児休業取得時に30万円、職場復帰時に30万円です。

都道府県や市区町村限定の補助金・助成金を活用

補助金や助成金は国が管轄するものだけでなく、都道府県等の地方公共団体が管轄しているものもあります。

該当地域で事業を展開している方に限られているため、申請者が少なく採用されやすいといった特徴があります。申請要件は、各都道府県・市区町村のホームページを確認しましょう。

  • 創業助成金(東京都中小企業振興公社)
  • 大阪起業家グローイングアップ補助金
  • 福岡よかとこ起業支援金

補助金や助成金の情報は不定期に更新されます。最新情報を追っている専門家に相談すると、最適な補助金・助成金が見つけやすいでしょう。

創業助成金(東京都中小企業振興公社)

創業助成金(東京都中小企業振興公社)は、都内での開業率向上を目標に、創業初期に必要な経費の一部を支援することを目的にした助成金です。

「令和6年度第2回創業助成事業」の募集が9月25日から始まりますので、募集要項を参考に創業助成金の概要を、以下に紹介しておきましょう。

被助成者・都内で創業を予定している者
・創業後5年未満の中小企業者
助成率2/3以内
助成金額下限額100万円 上限額400万円
採択率公表されていないが、申請要件を満たすことが重要
申請方法オンライン申請または郵送申請

創業助成金(東京都中小企業振興公社)の詳細な情報や募集要項を知りたい方は、「東京都中小企業振興公社の公式サイト」をご覧ください。

大阪起業家グローイングアップ補助金

大阪起業家グローイングアップ補助金は、大阪産業局が実施するビジネスプランコンテストの受賞者などに給付される補助金です。

大阪府内の事業者や、大阪府内で起業を目指す人を対象に公募されます。大阪起業家グローイングアップ補助金は下表のとおりです。

被補助者 ●ビジネスプランコンテストの優勝・準優勝者 ●大阪府内の事業者か大阪府内で起業する者
補助率 1/2以内
補助金額 50万円または100万円
採択率 公表されていないが、ビジネスプランコンテストでの評価が重要
申請方法 申請者は、『大阪府補助金交付規則』の第4条第1項の定める補助金交 付申請書などの書類を知事に提出

さらに詳細な情報を知りたい方は「大阪府の公式サイト」で確認してください。

福岡よかとこ起業支援金

福岡よかとこ起業支援金とは、社会的事業を福岡県内で起業する際に必要な経費の一部を補助することが目的の支援金です。

福岡よかとこ起業支援金の概要を把握するため、2024/6/17〜2024/7/31実施の1次募集要項を参考に、概要を紹介します。

被支援者 ●福岡県内で新たに起業する者 ●事業承継または第二創業を行う者 ●福岡よかとこビジネスプランコンテストの参加者
支援率 支援対象経費の1/2以内
支援金額 上限金額200万円
採択率 公表されていないが、ビジネスプランの質や 地域課題の解決に対する貢献度が重要
申請方法 指定された期間内に、郵送またはオンラインで申請

詳細な情報が知りたい方は、福岡県中小企業振興センターの 福岡よかとこ起業支援金のサイトで確認してください。

起業や開業時に補助金・助成金を活用する際の注意点

補助金や助成金を申請する前に知っておきたい注意点について解説します。

  • 前払いが原則のため開業に必要な資金を前もって用意する
  • 原則返還不要だが進捗報告の義務がある
  • 補助金は申請期間が限定されているためタイミングが重要
  • 種類が多く適切な補助金・助成金を探すのに時間がかかる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

前払いが原則のため開業に必要な資金を前もって用意する

多くの補助金・助成金では、事業の着手前に支給されるのではなく、対象事業の実施後に支給される後払い制が採用されています。

たとえ補助金・助成金の受給が決定しているケースであっても、開業するための資金は、自分で準備しなければなりません。

手順としては、自分で準備した資金で事業を立ち上げ、その後、費用の一部を補助金・助成金として受給します。

たとえば、総額300万円の事業で2/3の補助金・助成金が受けられる場合でも、まずは、自分で300万円を支払える準備をする必要があるのです。

総額300万円の事業で2/3の補助金・助成金を受給できるからといって、自己資金を100万円だけ準備しても開業できません。

後払い制の補助金・助成金を利用する際は、開業のために補助金・助成金については先に立て替えて支払うのです。

補助金・助成金を受給するまでの資金を自己資金で準備できない場合は、金融機関などからの短期的な借入れなども検討する必要があります。

原則返還不要だが進捗報告の義務がある

補助金・助成金を受給した場合、受給者には「進捗報告」の義務が発生します。

たとえば「ものづくり補助金」の場合であれば、「事業の進捗状況」「成果」「機械設置状況」「使用状況」などを、定期的に状況報告しなければなりません。

補助金・助成金の財源は国民の税金なのですから、適切な使途と成果の報告が厳しく求められるのは当然なことです。

進捗報告をしなかった場合には、給付を受けた補助金・助成金の返還を求められることがあります。

また、進捗報告を行わないことが、詐欺罪や公金横領罪に問われる可能性もあるのです。

進捗報告は補助金・助成金の適正利用の確認に、欠くことのできないプロセスであることを理解してください。

補助金は申請期間が限定されているためタイミングが重要

補助金の申請時期は種類や実施機関によって異なりますが、新年度が始まる前の2月、3月くらいから6月頃の募集開始が多いようです。

申請期間は1カ月前後であることが多いことから、タイミングよく申請するには、申請開始よりも前にしっかりとした情報収集が求められます。

タイミングを失ってしまうと、補助金の利用はできません。

起業や開業を検討する際は、早い段階で、役所に出向いたりインターネットを利用したりして、利用できそうな補助金についての情報収集が必要です。

補助金に比べ、助成金は締め切り時期が設定されていないケースが多くあります。

原則としては予算がなくなるまで応募できますが、予算がなくなると受付は終了です。

種類が多く適切な補助金・助成金を探すのに時間がかかる

補助金・助成金は、国がルールを策定して運用しているもののほか、地方公共団体や民間の団体によるものも多く存在しています。

数が多いだけではなく、国や地方公共団体などによる金に絡んだ制度の運用ということもあり、手続きが煩雑なうえ必要書類が多いことも、受給希望者を悩ませる問題です。

したがって、受給希望者が自分に最適の補助金・助成金を見つけ出すためには、時間がかかることを前提に補助金・助成金探しに取り組まなければなりません。

どのようなタイミングで補助金・助成金探スタートすれば良いかといったルールや鉄則はありませんが、

最短でも、起業や開業をしたい時期よりも1年か1年半以上前ではないでしょうか。

幅広く補助金・助成金の情報収集をするのであれば、さらに前の時期から取り組みます。

あまり時間を割けない人は、自身で探すのではなく、コンサルティング会社や補助金・助成金の専門家などに相談してみるのも方法の一つです。

この記事を書いた人

資金調達を専門とする行政書士事務所サブシディの代表。立教大学法学部卒。日本政策金融公庫や補助金を活用した資金繰り改善が得意。法律と金融に関する情報を発信しております。

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