日本政策金融公庫は返済免除できる?返済できない時の対処法

日本政策金融公庫は返済免除できる?返済できない時の対処法

日本政策金融公庫は金利の安さが特徴ですが、融資を受けた後に、様々な事情で返済が難しくなることがあるでしょう。

事業経営は上手くいかないことも多く、融資の返済できないとこともよくあります。

日本政策金融公庫は、国の融資機関であり、他の機関と比べて返済が難しい場合であっても柔軟に対応してくれます。

一方で、日本政策金融公庫に相談をしても大きな経営改善は見込めないでしょう。

そのため、返済に関する相談をしつつ専門家に経営サポートの相談をすることも大切です。

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目次

日本政策金融公庫融資の返済免除は原則としてできない

原則として、日本政策金融公庫の融資は返済免除ができません。

返済期限の延長割賦金の減額など、返済条件の緩和対応にとどまります。

日本政策金融公庫の制度に限らず、融資は返済免除ができないケースがほとんどです。

ただし日本政策金融公庫は返済が困難な時に受けられるサポートが他の金融機関に比べて充実しています。融資の返済免除はできないものの、返済負担を軽減させるための柔軟な対応が可能です。

日本政策金融公庫は民間の金融機関と異なり、営利だけを求める組織ではありません。民間金融機関の取り組みを補完することを旨に様々な事業を展開しています。

日本経済の発展や事業活動のサポートは公庫の目的の1つです。そのため事業が上手くいかず返済困難に陥った企業に対するサポート体制も充実しており、経営改善を親身に支援します。

融資の返済を滞納すると強制執行が行われる

日本政策金融公庫は経営改善の支援制度が充実していますが、返済条件の緩和対応を受けられるのは原則として事前に相談した場合のみです。

融資の返済を滞納すると遅延損害金の発生や、一括返済を求められる等の事態が生じます。一括返済もせず滞納状態を放置し続けるとやがて強制執行が行われます。強制執行では財産が差し押さえられるため、その後の事業継続は非常に困難です。

事業を継続させるためにも返済滞納は避けましょう

どうしても返済が難しい場合は、返済期日の前に公庫の担当者へ連絡し、現状や今後の対処について相談することが大切です。

滞納時に生じる流れ

日本政策金融公庫は、滞納をしたからと言ってすぐに強制執行が行われるわけではありません。

電話督促が行われるため、必要に応じて適切に対応しなければなりません。

  • 電話による督促
  • 遅延損害金の発生
  • 保証人による代位弁済
  • 一括返済の要求
  • 強制執行

滞納時に生じる流れについて詳しく見ていきましょう。

電話による督促

返済滞納を起こすと、まずは電話による催促が行われます。

この段階では取り立てのようなことは行われず、状況確認や今後の対応に関する相談がメインです。電話に出ず折り返しの連絡もしないでいると、やがて郵送による督促状が届くようになります。

日本政策金融公庫は性質上、返済困難な債務者に対してもいきなり厳しい対応はしません。

まずは返済負担の軽減といった柔軟な対応をしてもらえるのが一般的です。しかし、督促を無視し続けると次の段階に進み、やがて強制的な手段をとられてしまいます。

遅延損害金の発生

返済期日を1日でも過ぎると遅延損害金が発生します。

遅延損害金は遅延利息とも呼ばれるもので、返済遅延による損害賠償の性質を持つ金銭です。

令和6年10月時点における日本政策金融公庫の遅延損害金の割合は年8.70%です。遅延損害金は返済予定表に記載されている返済期日の翌日、または督促状に記載されている返済期日の翌日から発生します。

返済期日を過ぎてからの日数が多いほど遅延損害金の総額も増えるため、なるべく早く返済するのが理想です。

保証人による代位弁済

代位弁済とは債務者に代わって保証人が借入金を返済することです。

代位弁済が行われると、債権者は日本政策金融公庫から代位弁済をした保証人に代わります。日本政策金融公庫の融資の保証人になるのは、一般的には信用保証協会です。

代位弁済後は日本政策金融公庫に返済する必要はなくなるものの、返済義務が免除されるわけではありません。以降は保証人から返済の要求等を受けるようになります。

代位弁済後、代位弁済を行った旨を通知する「代位弁済履行通知書」が送付されます。通知書が届くタイミングはケースによって異なりますが、一般的には返済滞納を起こしてから数ヵ月後です。

一括返済の要求

代位弁済が行われた後は期限の利益が喪失するため、元金・利息・遅延損害金すべての一括返済を要求されます。

「期限の利益」とは、定められた期日が到来するまで借入金の返済や代金の支払いをしなくて良いとする権利です。借入金を分割返済できるのは、期限の利益が守られているためといえます。

返済滞納は事前に合意していた契約内容に反する行為です。そのため債務者の権利である期限の利益の喪失が起こり、一括返済の選択肢のみとなります。

強制執行

一括返済の要求に応えず保証人へ返済をせずにいると、やがて強制執行が行われる恐れがあります。

強制執行までの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 保証人から裁判所を通じて訴訟を起こされる
  2. 裁判所から債務者に対して裁判に出頭するよう要請される
  3. 2の要請を無視して出頭せずにいると、保証人の主張に基づいて裁判が行われる
    裁判へ出頭した場合、債務者の主張が加味される可能性もあります
  4. 債務者が出頭せず自動で敗訴となった場合、もしくは出頭したものの妥協案が認められなかった場合は強制執行の手続きが進められる

強制執行になると現預金および換金性のある財産が差し押さえられ、生活に大きな影響を及ぼします。事業継続はほぼ不可能になってしまうでしょう。

融資の返済ができない時の対処法

融資の返済ができない時はすぐに対応するようにしましょう。

公庫の担当者や専門家へ相談することが大切です。早めに相談することで、早期の適切な対応に繋がります。

  • 公庫の担当者へ相談
  • 資金繰り改善の専門家へ相談

相談をする際のポイントについて見ていきましょう。

公庫の担当者へ相談

融資の返済ができない・難しいと判明したら、まずは公庫の担当者へ相談しましょう。なるべく早いうちに相談するのが理想です。

日本政策金融公庫は小規模事業者等のサポートを目的の1つとしており、経営改善の支援メニューも充実しています。

返済困難な場合、相談者の事業状況に合わせて返済条件の緩和といった柔軟な対応を行います。

なお、公庫はあくまでも金融機関である以上、返済や資金繰り関連のサポートが中心です。事業そのものに詳しいわけではないため、経営サポートの面ではあまり期待できないでしょう。

事業活動や経営のサポートについては別の専門家の力を借りる必要があります。

日本政策金融公庫における返済条件の緩和策の具体例を3つ紹介します。

  • リスケ対応
  • 割賦金の減額
  • セーフティネット貸し付け

リスケ対応

融資におけるリスケ(リスケジュール)対応とは返済期限の延長対応です。

元金の返済を一定期間止めることで返済負担を大幅に抑えられます。資金繰りの解消見込みがある場合は、一時的に返済を止めるリスケ対応が効果的でしょう。

リスケ対応はあくまでも返済期限を遅らせる方法であり、返済が止まっている間も返済義務自体は残っています。返済を止めている期間中に資金繰りを改善させて返済資金を確保する必要があります。

また、返済が止まるのは原則として元金部分のみであり、利息の支払いは必要です。

割賦金の減額

割賦金の減額は毎月の元金返済額を減らす方法です。

返済期日の変更を伴わずに毎月の返済負担を軽減できます。返済額変更の調整が必要なため、早めに公庫の担当者へ連絡する必要があります。

あくまで毎月払う割賦金が減額される仕組みであり、元金そのものが減額される・元金の一部が返済免除になるわけではありません。

割賦金の減額により毎月の元金返済額が少なくなるため、元金完済までにかかる期間は長くなります。返済期間が長くなる分、利息の総額が増える点にも注意が必要です。

セーフティネット貸し付け

セーフティネット貸付とは、資金繰りで困っている中小企業等の支援を目的とした制度です。

中小企業向けのセーフティネット貸付には以下の3種類があります。

経営環境変化対応資金金融環境変化対応資金取引企業倒産対応資金
対象者社会的・経済的環境の変化により業況が悪化している方金融機関との取引状況の変化により資金繰りに支障を来している方関連企業の倒産による影響を受けている方
資金使途運転資金・設備資金運転資金のみ

資金繰り悪化の原因によってはセーフティネット貸付の対象となり、資金調達をできる可能性があります。

資金繰り改善の専門家へ相談

日本政策金融公庫は経営改善の支援メニューが豊富であり、返済困難になっても柔軟な対応を受けられます。

しかし、対応はあくまでも返済条件の緩和であり、返済義務そのものは免除されません。

返済条件の緩和を受けている間に資金繰りを改善させ、返済資金を確保する必要があります。

経営課題の抜本的な解決をするためには、事業や資金繰り・資金調達に特化した専門家へ相談しましょう。相談先として以下の例が挙げられます。

  • 税理士
    顧問税理士がいる場合、自社の内情に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。ただし資金調達等の財務面については詳しくないケースもあります
  • コンサルタント
    中小企業診断士や経営コンサルタントなど、経営改善を専門とするコンサルタントに相談するのも良いでしょう。
  • 債務整理
    どうしても返済が難しい場合は債務整理が必要です。債務整理の相談先は弁護士となります

専門家への相談によって実施できる対処法の例を紹介します。

債務整理

債務整理とは債権者との交渉や裁判所を通じた手続きにより債務負担を軽減もしくは免除してもらう手段です。経営改善や資金調達の見込みがなく、融資の返済がどうしても難しい場合は債務整理を行うことになります。

債務整理には主に以下の4種類があります。

任意整理債権者との交渉により将来の利息を免除してもらう方法
特定調停裁判所への申立てにより将来の利息を免除してもらう方法
個人再生家などの財産を残した上で借入金を大幅に減額する方法。裁判所への申立てが必要
自己破産債務を全額免除する方法。裁判所への申立てが必要

どの方法が適しているかはケースによって異なります。また、債権者との交渉や裁判所への申立て等は法律知識が必要なため、専門家である弁護士に相談するのが一般的です。

この記事を書いた人

資金調達を専門とする行政書士事務所サブシディの代表。立教大学法学部卒。日本政策金融公庫や補助金を活用した資金繰り改善が得意。法律と金融に関する情報を発信しております。

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