デジタル化・AI導入補助金は、2026年に新設された補助金制度です。
本制度は、従来の「IT導入補助金」から名称が変更されました。単なるITツールの導入にとどまらず、AI活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れをより重視する目的で見直されました。
旧IT導入補助金は、対象となる事業者が多く、採択率も比較的高かったことから、多くの事業者に活用されてきました。
今回のデジタル化・AI導入補助金についても、引き続き多くの事業者が利用しやすい制度となっています。
一方で、補助金を初めて検討する方にとっては、制度の仕組みが複雑で分かりにくいと感じることもあるでしょう。
そこで本記事では、デジタル化・AI導入補助金のサポートを行う行政書士事務所サブシディが、制度の基本を分かりやすく解説します。
本記事の読者は、主に以下の2つの立場に分かれます。
- ITツールを導入したい事業者
- 自社のITツールを、デジタル化・AI導入補助金の対象としたい事業者
それぞれの立場に応じて、ポイントを整理しながら解説していきます。


デジタル化・AI導入補助金とは?
デジタル化・AI導入補助金とは、業務の効率化やDX推進に役立つITツールの導入費用を一部補助することで、企業の生産性向上を支援する制度です。
AIやデジタル技術の活用を後押しし、企業の成長をサポートすることを目的としています。
ITツールを開発・提供している企業にとっては、自社商品が補助金の対象となることで、提案や販促がしやすくなるメリットがあります。
一方で、導入する事業者(法人や個人事業主)にとっては、費用の一部を補助してもらえるため、負担を抑えながら業務効率化につながるツールを導入できます。
スケジュール
デジタル化・AI導入補助金のスケジュールは「事前登録受付」と「交付申請期間」の2つに分かれています。
事前登録受付は、一部の事業者のみが対象。主にベンダー登録に関する手続きで、前年に登録している事業者などが該当します。
一方、新規でITツールを登録したい方や、実際にツールを導入したい事業者の方は、3月30日以降に始まる交付申請期間内に手続きを行います。
事前登録受付(1月30日~2月20日)
デジタル化・AI導入補助金では、例年「事前登録受付」が実施されています。
これは、前年度にIT導入支援事業者として登録された事業者を対象に、本年度の制度へ先行して登録できる仕組みです。
前年度に登録しているため、申請の流れはすでに把握できているはずです。
そのため、今年度も比較的スムーズに手続きを進められるでしょう。ただ、前年度との相違点もあるため、事前登録手続きのご案内をチェックしておきましょう。
交付申請期間(3月30日~)
3月30日からは、新規で申請する方を対象に交付申請期間が始まります。前年度に登録していた方も申請可能です。
ベンダーの方で、今年度も補助金制度に登録することが決まっている場合は、できるだけ早めに申請しておくことをおすすめします。
申請が遅れると、補助対象として認定される時期も後ろ倒しになってしまうためです。
申請対象者
申請対象者の要件は、業種・資本金・従業員数によって異なります。
資本金・従業員規模の一方が、基準を下回ることが要件となっています。
| 業種分類・組織形態 | 資本金基準 | 従業員基準 |
|---|---|---|
| 製造業(ゴム製品製造業を除く。)、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
例えば、建設業者は3億円の資本金以下でOKですが、小売業は5000万円以下と基準が異なっています。
業種の分類を誤ると、本来は対象となるはずでも要件を満たさなくなる可能性があるため、注意が必要です。
また、申請できるのは法人だけではありません。個人事業主の方も、補助金の申請やITツールの登録が可能です。
申請枠
デジタル・AI導入補助金は、対象となるツールや補助額が異なる複数の申請枠に分かれています。
導入する企業の規模やツールの種類によって、補助額や補助率が変わる仕組みです。まずは基本となる「通常枠」を確認しておきましょう。
申請枠ごとの補助率と補助額の一例をご紹介します。
| 申請枠 | 補助率 | 補助額 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2以内、2/3以内 | 5万円以上150万円未満(1プロセス以上)150万円以上450万円以下(4プロセス以上) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ①3/4以内、4/5以内 ②2/3以内 | ①50万円以下 ②50万円超〜350万円以下 |
| インボイス枠(電子取引類型) | 2/3 以内 or1/2 以内 | (下限なし)~350万円以下 |
| セキュリティ対策推進枠 | ①2/3以内(小規模事業者)②1/2以内(中小企業) | 5万円~150万円 |
| 複数社連携デジタル化・AI導入枠 | 補助対象経費による | 10万円~3000万円 |
ベンダー登録を検討しているツール開発会社の方は、申請枠によって補助額が大きく異なるため、どの枠で申請される可能性があるのかを把握しておくことが大切です。
補助額が小さい枠しか対象にならない場合、ITツールとして登録しても十分な効果が見込めないこともあります。
そのため、登録前にどの枠に該当するのかを正確に理解しておきましょう。
また、補助金を申請する事業者側は、自由に枠を選べるわけではなく、導入するツールによって該当する枠が決まります。
導入予定のツールがどの枠に該当するのか、そして最大でどのくらいの補助を受けられるのかをチェックしましょう。
デジタル化・AI導入補助金の申請の流れ
デジタル化・AI導入補助金は、自社にITツールを導入したい方と、自社のITツールを補助金の対象として登録したい方とで、申請の流れが異なります。
それぞれの申請方法について、具体的に見ていきましょう。
補助金の申請をしたい方
まずは、自社で導入したいITツールを検討しましょう。
公式サイトには導入ITツールの活用事例が掲載されているため、確認しておくのがおすすめです。
同じ業種の事例であれば、自社でも活用できる可能性が高いでしょう。どの業務でどのように活用し、どの程度効率化されたのかまで具体的に紹介されているため、導入後のイメージがつかみやすくなります。
気になるツールが見つかったら、次にそのツールを取り扱っている「IT導入支援事業者」を探します。
補助金の申請は、このIT導入支援事業者と一緒に進めていくことになります。
実績のある支援事業者であれば制度にも精通しているため、サポートを受けながら安心して手続きを進められます。
その後、gBizIDプライムの取得・設定などの準備を行い、申請書を作成して交付申請を行います。
交付が決定し、ITツールの導入と支払いが完了すると、補助金が支給されます。
なお、受給後にはITツール導入による効果報告などの手続きも必要です。申請して終わりではありませんので、事後報告も忘れずに対応しましょう。
ITツールを補助金の対象にしたい方
自社のITツールを補助金制度に登録すると、購入者の負担が軽減されるため、販促につながります。
補助金が活用できることで導入のハードルが下がり、販売機会の拡大が期待できます。
一方で、一定額の補助金が支給される制度であるため、ツールの審査や要件は比較的厳しく設定されています。
販売実績が求められる場合もあり、事務局からツールの内容について細かい確認や調査が行われることもあります。
また、手続き自体も煩雑で、想像以上に時間や労力がかかる点には注意が必要です。
ITツールを補助金の対象として登録する、いわゆるベンダー登録(IT導入支援事業者登録)を行うには、まず公開される公募要領を隅々まで読み込みましょう。
どの申請枠に該当するのか、自社のITツールが要件を満たしているかを丁寧に確認します。基本的な流れは、次のとおりです。
- デジタル化・AI導入補助金のHPより仮登録
- IT事業者ポータルにログインし事業者情報とITツール情報入力
- 事務局による審査
- 事務局の採否の決定
自社に担当者をつけて申請から運用まで行う会社もあります。リソースに余裕のある会社は自社で対応するのもいいでしょう。
あまりリソースをさけない事業者は、専門家にサポートを受けながら負担を減らすのが多いです。


デジタル化・AI導入補助金の注意点
デジタル化・AI導入補助金は活用しやすい制度ですが、財源は税金であるため、利用する側にも一定の責任があります。
制度の目的や趣旨を正しく理解したうえで、適切に活用することが求められます。
補助金を「使いたい」という気持ちが先行してしまうと、制度の理解が不十分なまま申請してしまい、思わぬトラブルにつながることもあります。
利用を検討している方は、事前に補助金制度の内容や注意点をしっかり確認しておきましょう。
不正行為は犯罪でありリスクが高い
デジタル化・AI導入補助金を利用するうえで、特に注意しなければならないのが不正行為です。
補助金申請では、不正受給がたびたび問題となっており、過去のIT導入補助金でも不正事例がニュースとして取り上げられてきました。
不正の手口には、キックバックの受け取りや、要件を不正に満たしたように見せかける申請など、さまざまなものがあります。
補助金の申請は、IT導入支援事業者(ベンダー)と一緒に進めていきます。自分では気づかないうちに不正行為に巻き込まれてしまう可能性もあります。
万が一、不正行為に該当すると、事業者名が公表されるなど、経営上大きなリスクを負うことになります。そのため、不正行為は絶対に避けるべきであり、十分な注意が必要です。
補助金を安心して活用するためにも、IT導入支援事業者を選ぶ際は、実績や信頼性を確認し、適切な事業者を慎重に選定しましょう。
目的は補助金の受給ではなくITツールの導入
デジタル化・AI導入補助金は、最大450万円の受給が可能と聞くと、経営者の方にとっては魅力的に感じられ、利用を検討したくなるでしょう。
しかし、補助金は「受給すること」自体が目的ではありません。本来の目的は、ITツールを導入し、事業の生産性向上や業務改善につなげることです。
そのため、補助金が使えるからという理由だけで判断するのではなく、自社にとって本当に必要なツールかどうかを十分に検討しましょう。
必要性の低いツールを導入してしまうと、結果的にコストや運用の負担が増えてしまう可能性もあります。補助金があるとはいえ、自己負担となる費用は必ず発生します。
さらに、補助金の財源は国民の税金である以上、受給する事業者には一定の責任が伴います。
事業にしっかりと役立ち、ひいては社会や経済にも貢献できるITツールを導入することを、常に意識しながら補助金を活用していきましょう。
申請方法や登録方法が複雑
他の補助金と比べると、AI導入補助金は申請やツール登録の手続きが比較的シンプルです。とはいえ、覚えるべき情報量が多く、案内資料や手引きをしっかり読み込む必要があります。
補助金申請に慣れていないと、内容を正しく理解するだけでも大変でしょう。
読み違いや認識のズレがあると、申請の却下や、想定していた申請枠で利用できなかったりすることがあります。
また、事後報告に不備があると、余計な手間がかかってしまう可能性もあります。
そのため、補助金申請に慣れている専門家のサポートを受けるのがよいでしょう。
自社で主体的に進めながら、分からない部分だけ相談したり、社内でリソースを割けない業務を代行してもらうこともできます。
「何から始めればよいか分からない」という場合は、まずは専門家に相談してみましょう。
年々要件が厳しくなっている
IT導入補助金は、長年続いている歴史のある補助金制度です。制度開始当初は採択率も高く、多くの事業者が活用していました。
しかし、予算の制約や不正受給の問題などさまざまな背景から、年々採択率は下がる傾向にあります。以前と比べると活用のハードルはやや高くなっています。
制度の運用も徐々に厳格化されてきました。
かつてはECサイト制作も補助対象とされていましたが、近年では対象外となるなど、対象範囲も見直されています。
現在は、より制度の目的に沿ったITツールの導入が求められており、本来の趣旨に合った活用が重要です。


