日本では近年、スタートアップの資金調達環境が徐々に整備されつつあります。
ベンチャーキャピタルや事業会社による投資が増えており、政府もスタートアップを成長戦略の柱の一つとして位置づけています。
経済産業省の試算によると、スタートアップによるGDP創出額は直接効果で約12.19兆円、間接波及効果まで含めると約22.33兆円とされ、日本全体のGDPの約4%を占めています。(引用:スタートアップ・エコシステムの現状と経済産業省の取り組みについて)
また、2023年比で約15%の成長が見込まれるなど、マクロ経済への影響も注目されています。一方で、海外と比べると投資額や大型スタートアップの数はまだ多いとはいえず、資金調達環境のさらなる整備が課題とされています。
政府が進めるスタートアップ支援政策
日本政府はスタートアップの成長を促進するため、さまざまな支援政策を進めています。代表的な取り組みとして「スタートアップ育成5か年計画」があります。

投資額の拡大や人材育成、規制改革などを通じてスタートアップの成長環境を整備することを目指しています。
特に資金調達面では、ベンチャーキャピタルへの投資促進や公的ファンドの活用などにより、民間資金の流入を増やす動きが進んでいます。
また、M&Aの活性化やスタートアップの海外展開支援など、成長後の出口戦略も重視されています。日本から世界的なスタートアップを生み出すための基盤づくりとして位置づけられています。
資金調達環境に影響する景気とGDP
スタートアップの資金調達環境は、景気やGDPの動向とも密接に関係しています。
景気が拡大している局面では企業活動や投資意欲が高まり、ベンチャーキャピタルや金融機関による投資も活発になる傾向があります。
一方で、景気が後退すると投資家はリスクを抑える姿勢を強めるため、スタートアップへの資金供給は慎重になりやすくなります。
GDPの成長は経済全体の活発さを示す指標であり、スタートアップ投資の環境を考えるうえでも重要な要素です。スタートアップの成長は新しい産業や雇用の創出につながるため、GDPの拡大にも寄与すると考えられています。
景気とGDPの動向はスタートアップの資金調達環境に大きな影響を与えるため、事業者の方は景気動向を常にチェックしておくとよいでしょう。
スタートアップ資金調達環境の今後
今後のスタートアップ資金調達環境では、ベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、銀行の役割も重要になると考えられます。
これまでスタートアップへの資金供給は主にVCや投資ファンドが中心でした。しかし現在は企業の成長段階に応じて銀行融資を活用するケースも増えています。
銀行にとっても新しい成長企業との取引は重要であり、データ活用やDXの進展によってスタートアップ向けの金融サービスが広がる可能性があります。
また、VCは資金提供だけでなく、経営支援やネットワークの提供などの役割も担っています。
銀行とVCがそれぞれの強みを活かして連携することで、スタートアップの成長を支える資金調達環境がさらに整っていくことが期待されています。
スタートアップ経営者が押さえておきたい経済の基本
経営者は自社の事業だけでなく、景気や金融環境など経済全体の流れも理解しておくことも大切です。マクロ経済の動きを知ることで、資金調達のタイミングや事業戦略の判断にも役立ちます。

高山 和夫 准教授
(福山大学 経済学部 国際経済学科)
GDPと景気
日本経済の景気動向を知るには、GDP(国内総生産)の変化率としての経済成長率を見るのが分かりやすい。
GDPには支出・生産・分配の「三面等価の原則」があるが、日本では支出系列の四半期別速報が重要視されており、四半期ごとに1次速報と2次速報が公表されている。
また産業別の動向を知りたいときには、参考系列ではあるが生産側系列の四半期速報も公表されている。
尤も景気動向を判断するにはGDPだけでなく、為替レート、物価、雇用、生産など様々な指標を見て景気判断をしている。
最近では、地政学的リスクを踏まえた消費者物価指数(CPI)などの物価動向には注意が必要である。特に、中央銀行は物価の安定を重視しており、物価と政策金利の動向にも注目する必要がある。
