ビジネスローンを利用する際には、所定の審査が行われます。財務状況や事業の将来性によっては、審査に通らず融資を受けられないこともあります。
特に、資金繰りが厳しいタイミングで申し込む場合は、審査に落ちてしまうケースも少なくありません。
ビジネスローンは、メガバンクやネット銀行などさまざまな金融機関のサービスとして提供されています。各社ごとに独自の審査基準が設けられています。申し込む会社によっては、審査結果が大きく異なる可能性があります。
また、個人事業主の方は法人に比べて審査が厳しく見られる傾向があります。そのため、自社の財務状況や事業形態に合ったビジネスローンを選ぶことが大切です。
今回は、ビジネスローンを含めた資金調達支援を行う行政書士事務所サブシディが、審査の実態についてわかりやすく解説します。
実際に支援した事例も交えながら紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ビジネスローンにおける審査とは?
ビジネスローンにおいては審査は必須です。つまり「審査のないビジネスローン」はありません。審査基準や審査に通らない原因について詳しく見ていきましょう。
必要書類と審査項目
ビジネスローンの審査における必要書類は各社でほとんど共通しています。
法人の場合は、一般的に下記の書類が求められます。
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、保険証)
- 決算書(法人の場合)
- 会社謄本
- 事業計画書
個人事業主の場合は、法人よりも必要書類が少なくなる傾向にあります。
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、保険証)
- 確定申告書類
他にも、必要書類の多いビジネスローン会社では「納税証明書」「通帳のコピー」などが求められます。これらの提出された必要書類をもとに、各審査項目に照らし合わせて審査が行われます。
特に重要な資料は「決算書」と「確定申告書類」です。会社の財務状況や事業について将来性があるかを確認されます。
審査基準
ビジネスローンの具体的な審査基準は公表されていません。ビジネスローン会社によって、いわゆる「独自審査」が行われています。
審査において重要なのは、各ビジネスローン会社が何を重視しているかです。
例えば、銀行系のビジネスローンでは、返済可能性が十分にあると判断された場合にしか通らないケースが多い傾向にあります。
一方で、銀行融資が難しい中小企業を支援する目的で、柔軟な審査を行っている会社もあります。単に決算書の数値だけでなく、事業の将来性や経営者の姿勢といった非財務的な要素を評価に含めているケースもあります。
審査に通らない原因
ビジネスローンの審査に通らない原因は、大きく3つに分かれています。事前に、審査に通らない原因を把握しておき、審査落ちしないように対策しておきましょう。
財務状況が悪い
審査に通らない原因として最も多い原因が財務状況の悪さです。
例えば、赤字決算が続いていたり、売上が年々減少している場合には「将来的に返済が難しくなるのでは」と判断されて審査に落ちることがあります。
また、すでに他社からの多くの借り入れがあると、返済能力に不安があると見なされて審査において不利になることがあります。
決算書や確定申告書に表れない事情がある場合は、ネットで完結するビジネスローンではなく担当者へ直接面談しながら審査が行われるビジネスローン会社を選ぶのがいいでしょう。
事業に改善の見込みがない
事業の売上が年々減少しており、改善の見込みがない場合は、審査に落ちる可能性が高くなります。
主に、審査では事業計画の内容も細かく確認されます。「これから改善する予定」と書いてあっても、実現可能性が低いと判断されると審査に落ちてしまいます。
仮にビジネスローンで融資を受けられても、事業改善が進まなければ返済が難しくなるでしょう。そのため、資金調達だけでなく、抜本的な事業の改善を図ることが重要です。
ビジネスローンを申請する前に、必要であれば専門家や信頼できる経営者に相談してみるとよいでしょう。
複数社への同時申し込み
複数のビジネスローン会社に同時に申し込むのは注意が必要です。
同時申込が多いと「資金繰りに困っている」と判断され、審査に不利になる可能性があります。
ビジネスローン会社は審査時に信用情報を確認します。その際、他社への申込履歴も把握されます。急ぎで資金が必要な場合でも、まずは一社ずつ慎重に申し込むようにしましょう。
一方で、ビジネスローンの審査に一度落ちたからといって、別の会社の審査に大きな影響が出ることはほとんどありません。
審査落ちの履歴だけで信用が著しく下がることはないと考えてよいでしょう。
審査の甘いビジネスローンはある?
ビジネスローンを検討されている方はなるべく審査の甘いビジネスローンを利用したいと考えるでしょう。
実際に、他のローンと比べて審査が通りやすいとされるビジネスローンは存在します。
ただし、注意が必要です。一般的に、審査が厳しいビジネスローンほど金利が低く事業資金として活用しやすい傾向にあります。
例えば、大手銀行のローンは審査が厳しい分、金利が低く設定されています。一方で、審査が甘いビジネスローンは、リスクが高い分、金利が高めに設定されています。
つまり「金利の低さ」と「審査の通りやすさ」はトレードオフの関係にあります。
自社の状況に応じて、どちらを重視するかを見極めて適切なビジネスローンを選ぶことが大切です。
また、審査の難易度は経済情勢によっても変動します。同じビジネスローンでも「通りやすい時期」と「通りにくい時期」がある点も知っておきましょう。
柔軟な審査が特徴のビジネスローンの特徴
ビジネスローンは、会社によって条件が異なります。法人のみに対応していたり、100万円からの融資しか対応していなかったりと様々です。
柔軟な審査になる傾向があるビジネスローン会社の特徴は下記のとおりです。
- ネット銀行
- 個人事業主にも対応
- 担当者との面談が必須
- 最低融資額が低い
特に、個人事業主に対応しているビジネスローン会社は小規模事業者に対して将来性を見て融資を判断してくれます。
個人事業主やフリーランスは、法人に比べて返済能力が低いと判断されやすく、審査の対象外となることも少なくありません。そんな中でも、個人事業主に対応しているビジネスローン会社は、柔軟な審査が期待できるでしょう。
また、最低融資額の低さもチェックしておきましょう。
実例で解説!審査に通ったケース
資金調達方法支援を行う行政書士事務所サブシディが解説する「審査に通ったケース」についてご紹介します。
赤字決算
地方の小さな法人がビジネスローンを活用できた事例です。
「赤字決算」であり、日本政策金融公庫や銀行融資は難しいだろうと半ば諦めていました。しかし、事業を改善していくためには資金調達は必須であり、どうしようか悩んでおりました。
初めに申し込んだビジネスローンは、知名度の高いサービスです。オンライン完結なので、比較的通りやすいと思っていましたが、審査に落ちてしまいました。やはり赤字決算が響いたのかなと思っています。
次は、面談ありのビジネスローンに申し込んでみました。決算書だけを見せても、審査に落ちそうなので下記の点を重点的に説明をしました。
- 赤字決算は過去の設備投資が響いていること
- 取引先との交渉が上手くいっており単価を上げられる可能性があること
事業についても細かく話したところ、将来性を高く評価してもらいました。希望であった250万円の融資が実行されました。
赤字決算の事業者で、何か事情がある方は面談で詳しく話すと上手く行くかもしれません。
債務超過
飲食店を経営しています。当時、売り上げを改善すべく店舗改装を考えていました。しかし、他社からの借り入れもあり新たな借り入れは難しいと思っていました。
実際に、銀行からは新規の借り入れは難しいと断られてしまいました。民間のビジネスローンに頼らざるを得ない状況でした。銀行と比べて金利が高いイメージがあり、積極的には利用したくないのが本音です。
最初に申し込んだのは、オンライン完結型の有名なビジネスローン会社でした。
希望額がそれほど大きくなかったこともあり、審査はスムーズに通過。問題なく借り入れることができて安心しました。
審査に通るために行うべき工夫
ビジネスローンは、事前の準備を丁寧に行うことで審査通過率は上がります。
例えば、必要書類の不備を無くすことや会社の信頼性を下げる税金の滞納を解消しておくことなどが挙げられます。
必要書類の不備を無くす
ビジネスローンの審査を少しでも有利に進めるためには、必要書類の不備に気を付けましょう。必要書類の不備があると審査に悪影響を及ぼすことがあります。
書類の不備によって審査に時間がかかることに加えて、審査においてネガティブな評価を受けます。
実際に、行政書士事務所サブシディが金融機関に取材をしたところ「書類の不備を含めた雑な申請はマイナス評価になる」とのことでした。
雑な申請であることは、事業においても雑であると判断される可能性があります。資金調達は事業においては最重要であり、丁寧に対応するように心がけましょう。
資金の使用使途を明確にし事業計画を作成する
「必要書類の不備」と聞くと、書類の不足や記入漏れなどをイメージしがちです。
しかし実際には、必要書類を揃えて提出したつもりでも、審査に必要な情報が不十分だと判断されるケースが多くあります。
想定していなかった追加の書類提出を求められることがあり、審査対応に手間がかかることになります。
特に不足しがちな情報としては「調達した資金の具体的な使い道」「今後の収支見通しや事業計画の内容」などが挙げられます。
申込後に提出を求められることもあります。あらかじめ準備しておくのがよいでしょう。
資金の使途を明確にして、簡単な事業計画を作っておくと、融資以外にも事業改善において役に立ちます。
税金の滞納や未納を解消しておく
税金に滞納や未納がある場合は、ビジネスローンの申込み前に必ず解消しておきましょう。
信用情報に記録されるのはローンやクレジットカードなどの金融取引のみです。そのため、税金の滞納歴は基本的に登録されません。
税金を滞納しても「審査に影響しないのでは」と考える方もいるかもしれません。
しかし、法人であれば決算書に未納税金の記載があるため一目で分かります。
個人事業主であっても、ビジネスローン会社の担当者から税金の滞納状況について直接確認されるケースがあります。実務上、多くのケースで滞納の有無は判明すると考えてよいでしょう。
税金の滞納は審査において非常にマイナスとなります。申し込む前にすべて納税を済ませておくことが大切です。
ビジネスローンの審査に落ちたらどうすればいい?
ビジネスローンの審査通過率は、当事務所の支援実績やビジネスローン会社への取材から見るに、おおよそ5%〜30%程度です。つまり、多くの場合で審査に落ちてしまいます。
審査に通らなかったからといって、資金調達の必要がなくなるわけではありません。落ちてしまった後に具体的にどうすれば良いのかについて見ていきましょう。
別のビジネスローン会社に申し込む
ビジネスローンは審査通過率が低く、一般的に2~3社ほど申し込むケースとされています。
まずは、審査に通りやすそうなビジネスローン会社から申し込み、落ちた場合は別の会社に申し込みましょう。
オンライン完結型のビジネスローンに審査落ちした場合は、面談が必須のビジネスローン会社に変えるといいでしょう。
オンライン完結型はシステムによる機械的な審査がなされます。個別の事情が考慮されにくい傾向にあります。
一方、営業担当者との面談が必須のビジネスローンは、事業の背景や資金の必要性を直接伝えることで、審査に通る可能性が高まります。
他の資金調達方法を検討する
資金調達の方法は、ビジネスローンだけではありません。審査に落ちてしまった場合は、他の手段を検討しましょう。
ビジネスローンに申し込む前から、代替手段をあらかじめ考えておくのが大切です。
たとえば、請求書を活用した資金調達や、知人・関係者からの借り入れなど、さまざまな方法があります。
行政書士事務所サブシディでは、各種士業や金融機関と連携し資金調達をサポートをしております。資金調達方法を検討されている方はお気軽にご相談ください。
ビジネスローンの審査に関するよくある質問
最後に、ビジネスローンの審査に関するよくある質問をご紹介します。
- 審査のないビジネスローンはありますか?
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審査のないビジネスローンはありません。全てのビジネスローン会社で厳格な審査が行われています。
貸金業法において、ビジネスローンを含めた各種ローンは返済能力について調査することが義務付けられています。
- 個人事業主に審査の甘いサービスはありますか?
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個人事業主に対応しているビジネスローンであれば基本的に柔軟な審査が期待できます。
一般的に、ほとんどのビジネスローンは法人のみの対応です。特に無担保のビジネスローンサービスはリスクがあるため法人に限定するケースが目立ちます。
個人事業主に対応しているサービスは、審査をそこまで厳しくしていないケースがあります。